電子技術研究倶楽部

金属探知機(3V動作版)

   

この記事で紹介するのは,以前投稿した金属探知機の記事の回路定数を変更して,3Vで動作可能としたものです.技術的に特に新しいわけではありませんが,一応手元で動作試験を行ったので,供養がてら投稿します.

発端

以前の金属探知機の記事に,コメントを頂きました.コメントをくださいました方は地元のクラブで小学生の方に電子工作の指導を行っておられるようで,大変すばらしい活動であると共感いたしました.(私自身,そうしたクラブ活動をきっかけとして,20余年,道を誤り続けた結果,大学教員にまでなってますしね)そこで誠に微力ながら,お手伝いできないかと思い,本記事を作成した次第です.7年以上も前の記事をご覧いただけたこと,またコメントを頂けましたこと,とてもうれしく思います.この場をお借りして,御礼申し上げます.

 

回路図と改変点

3Vで動作するように改変した金属探知機の回路は下図のようになります.

上図だとなかなか改変点が分かりにくいように思えますので,元の回路からの改変箇所を赤枠で強調したものを次図に示します.

改変箇所は大まかに以下のようになっています.

  1. インダクタL1の巻き数を40回+40回の計80回巻 → 15回+15回巻の計30回に減らしている.
    これは金属への反応感度を高めるためです.元の回路では電源電圧を6Vとしていたため,ハートレー発振回路の出力を捉えるコンパレータの入力ダイナミックレンジが広くなっていました.そのため,発振回路の出力振幅の微弱な変動を容易にとらえることができました.一方で本回路では電源電圧を3Vまで下げているため,入力ダイナミックレンジが稼げません.そのため,発振回路の出力そのものが,金属の有無によって過敏に変動するように,インダクタンス値を下げています.(代償として,消費電力が増大しています)

  2. 帰還抵抗R1の値を1kΩ → 51Ωに変更
    電源電圧を変更したため,トランジスタの動作点が元の回路から大きく変化しています.また,電源電圧が低いことによって,トランジスタの増幅能力が低下しています.そのため,本帰還抵抗の大きさを大幅に小さくすることで,対応しています.(この値は必ずしも最適値ではない可能性があります.)

  3. バイアス抵抗R2の値を1MΩ → 100kΩに変更
    本回路は,元の回路よりもかなり高い周波数でトランジスタは増幅動作を行います.そのため,トランジスタに十分なバイアス電流を流すため,固定バイアスの抵抗値を100kΩに下げています.(この値は必ずしも最適値ではない可能性があります.)

  4. 当初の回路に存在した負荷抵抗VR1を削除して短絡
  5. 当初の回路に存在した負荷抵抗R3を 1MΩの固定抵抗から,10kΩの半固定抵抗VR1に変更
    4. および5. はいずれも,電源電圧と回路の発振条件が変わったことにより,回路の出力インピーダンスが大きく変化したことに対応する措置です.値は実測に基づき,カット&トライで決定しました.

  6. コンパレータU1の負荷抵抗R9の値を 10kΩ → 1kΩに変更
  7. トランジスタQ2の入力抵抗R10の値を 10kΩ → 1kΩに変更
    圧電素子を大音量で鳴らすためにはある程度の電流をコイルにチャージする必要があります.しかし,本回路の電源電圧は3Vと,元の回路の半分しかありません.そこで,トランジスタのベースに十分な電流が流れるように,コンパレータの負荷抵抗と,トランジスタの入力抵抗を変更しています.

半固定抵抗の調整

今回の回路の調整は,元の回路の調整よりもややシビアになります.調整の際は,まず半固定抵抗の抵抗値が,5kΩ程度になるようにします.(テスターをお持ちでない場合は,抵抗目盛のおおよそ中間程度を指すように調整する.)その後,本体から金属を十分に離したうえで,ブザーがギリギリ鳴るか鳴らないかの状態になるように,抵抗値を調整するとよいでしょう.

今回の回路は電源電圧が低くなった分,発振回路の金属への感度をかなり高くしています.発振回路の動作は,元の回路よりもやや不安定になります.そのため,本回路を実験する際は,自分の手などを基板の裏面などに近づけないことが大事です.(寄生容量が,回路の動作に影響を与えます.)

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