金属探知機(製作編1)
2016/09/28
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製作編1
さあ、今回はいよいよ金属探知機を作り始めます。今回は部品を集め、金属探知機の心臓となる発振回路に用いるコイルを作っていきます。ちなみに、コイルはかなり雑に作っても動くことを確認しておりますので、不器用な人もご安心を。
金属探知機 回路図
電子工作と言えば回路図! 回路図と言えば電子工作! なので、まずは回路図から見ていきましょう。(初心者の方は全く理解できなくても大丈夫です。「解説編」の方で詳しく説明していくので。)
ハートレー発振回路と包絡線検波回路、そして可聴音域発振回路を組み合わせた、非常にシンプルな構成になっています。各々の回路は無線工学や電子回路の教科書に載っているものをほとんどそのまま使っているので、一度説明を聞けば同じものを組み立てられるようになるでしょう。(詳しくは解説編で説明)
必要な電子部品
次に必要な電子部品を見ていきましょう。部品数は決して多くはないので、秋葉原や日本橋で安そうなお店を探して買いましょう。(通販利用の方は、UEWを除けば秋月電子ですべて入手可能だと思います。)
部品名 | 数量 | 調達先 | 備考 |
炭素皮膜抵抗 1kΩ (カラーコードは 茶 黒 赤 金) | 1 | 「カーボン抵抗」と呼ばれることも。(以下同) | |
炭素皮膜抵抗 10k (カラーコードは 茶 黒 橙 金) | 3 | ||
炭素皮膜抵抗 47kΩ (カラーコードは 黄 紫 橙 金) | 2 | ||
炭素皮膜抵抗 100kΩ (カラーコードは 茶 黒 黄 金) | 2 | ||
炭素皮膜抵抗 1MΩ (カラーコードは 茶 黒 緑 金) | 2 | ||
半固定抵抗 500kΩ (「504」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-01034) | 多回転式のものでもよい(がメリットは全くない。) |
セラミックコンデンサ 100pF (「101」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-09320) | 積層セラミックコンデンサでも可 |
セラミックコンデンサ 1000pF (「102」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-08949) | 積層セラミックコンデンサでも可 |
セラミックコンデンサ 4700pF (「472」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-08951) | 積層セラミックコンデンサでも可 |
セラミックコンデンサ0.1μF (「104」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-00090) | 積層セラミックコンデンサでも可 |
マイクロインダクタ 4.7mH (「472」と表記有) | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-06953) | 形は問わない |
圧電スピーカー | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-01251) | 径25mm程度のものが好ましい。 なければ「セラミックイヤホン」で代用可能 |
シリコンダイオード 1S2076A | 1 | 秋月電子 (注文コード:I-00941) | 1S2076Aが手に入らなければ、1S1588, 1N4148などでも代用可能。 |
トランジスタ 2SC1815-GR | 2 | 秋月電子 (注文コード:I-00881) | GRランクの使用を推奨(他のランクだと定数の変更が必要の可能性あり) |
2 回路入りコンパレータ NJM2903 | 1 | 秋月電子 (注文コード:I-06654) | |
ユニバーサル基板 Cタイプ | 1 | 秋月電子 (注文コード:P-03229 | 秋月電子で販売しているものを使用。この基板以上の大きさのものであれば何でも構わない。 |
電池ボックス 単3乾電池×4本用 | 1 | ||
径0.26mm ポリウレタン銅線 | 10m | ホームセンター等にもおいてることがある 大阪だとシリコンハウスには間違いなくあった。 | 銅線径は0.26mm~0.4mmなら何でもよい。 UEW(ポリウレタン銅線)に 限らず、ポリエステル線、ホルマル線など、絶縁被覆がある銅線なら何でもよい。(エナメル線と書かれて売られている場合が多い。) |
単3乾電池 | 4 | アルカリでもマンガンでもなんでも良い | |
直径30mm前後の丸棒 | 1 | 「台所」など(笑) | コイルを巻くのに使います。作品には組み込みませんので、材質は何でもOK。 台所にある「麺棒」なんかがいい感じ(笑) |
他に、配線用のスズめっき線などがあると便利でしょうが、なくても何とかなります。(部品の足をまげて半田付けすれば充分足ります。)
それでは、少しばかり各部品について説明を致します。
炭素皮膜抵抗
「炭素皮膜抵抗」は「カーボン抵抗」などとも呼ばれる、最も一般的な部品です。極性は無いので、どちら向きに使っても構いません。
値は、抵抗本体に記載されている4本ないし5本のカラーコードで読み取ります。
下の写真に示す5種類10本の炭素皮膜抵抗を使用します。
(左端から)
1番目: カラーコード 茶(1)・黒(0)・赤(×100)・金(誤差5%)⇒ 1000Ω(=1kΩ)誤差5%
2番目: カラーコード 茶(1)・黒(0)・橙(×1000)・金(誤差5%)⇒ 10000Ω(=10kΩ)誤差5%
3番目: カラーコード 黄(4)・紫(7)・橙(×1000)・金(誤差5%)⇒ 47000Ω(=47kΩ)誤差5%
4番目: カラーコード 茶(1)・黒(0)・黄(×10000)・金(誤差5%)⇒ 100000Ω(=100kΩ)誤差5%
5番目: カラーコード 茶(1)・黒(0)・緑(×100000)・金(誤差5%)⇒ 1000000Ω(=1MΩ)誤差5%
定格は1/6W以上であれば何でもよいです。(私は1/2Wのものを使用しました。)
上述の通り、抵抗はカラーコードで値を読むので、抵抗そのものには数字などが印字されていません。
したがって、電子部品屋などでばら売りされているものを買うときは、他のお客さんが間違って棚に戻したものが混ざっている可能性があるので、面倒でも一つ一つのコードを読むことをお勧めします。ちなみに私はそれが面倒なので、秋月電子の抵抗セットを買ってしまいました。
余談ですが、今回はすべての抵抗を足幅10mmになるように曲げておくと、作業が楽になります。(下図)
半固定抵抗
ドライバーでくるくる回すことによって、抵抗値が変化する部品です。一般には3本脚になっています。
今回は抵抗値が500kオームのものを一つ使用します。(部品のどこかに「504と記載がある」)
私は下図のようなものを使用しましたが、形状は製造している企業によって様々です。
この形にこだわる必要は全くないので、お店にあるものを購入すればOKです。
セラミックコンデンサ
下の写真のような、外観のコンデンサになります。極性は無いので、どちら向きに使っても構いません。コンデンサは2枚の電極の間に誘電体を挟み込んだ構造をしていますが、その誘電体にセラミックを用いていることからこの名称があります。
もし、セラミックコンデンサが手に入らなければ、積層セラミックコンデンサでも問題ありません。
というかここ10年ばかりは下の写真のような単板型セラミックコンデンサが手に入りにくくなってきている気がします。 ちなみに、色は下の写真のようなものだけでなく、焦げ茶色、緑、黄色、灰色などなど様々なものが出回っています。モノによっては、頭に少しだけペンキが塗ってあるものもありますが、中身は全く同じですので、安心しましょう。
マイクロインダクタ
今回は下の写真のような、「ラジアルリードタイプ」のマイクロインダクタを使用しました。
インダクタンスは4.7mHのものを一つ使用します。極性は無いので、どちら向きに使っても構いません。
「ラジアルリードタイプ」というのは電子部品の形状を意味します。
下の図をご覧ください。 左図のカーボン抵抗のような形状を「アキシャルリードタイプ」と呼びます。 参考までに「アキシャル(axial)」は「軸上の」という意味であり、「ラジアル(radial)」は「放射状の」という意味になります。リード線を中心に軸上に素子が存在するのか、軸を中心に放射状に位置しているのかを表すわけですね。
ちなみに、秋月電子では4.7mHのマイクロインダクタは「アキシャルリードタイプ」しか置いていません。もちろん、アキシャルリードタイプでも使うことはできるのですが、明日お見せする説明図はラジアルリードタイプで描いているので、適宜読み替えてください。
圧電スピーカー
秋月電子で販売している径24mmのものを使用しました。他のサイズでも使用できると思いますので、同じ径のものがなかったら、他の径のもので実験してみましょう。
ちなみに、上の写真では、黒いケースに圧電スピーカが収められていますが、生で売られているものもあります。(秋月電子のコレとか) もちろんこのタイプも使用できますが、リードが取れやすいため、できれば上のような、ケース入りのものを使用することをお勧めします。
シリコンダイオード
電気を一方方向にしか通さない部品になります。したがって、極性があり、逆方向に接続すると動作しないのでご注意ください。今回はこの性質を利用して、金属の有無を直流電圧の高低に変換することを目論んでいます。
私は10年前?に購入した1S2076Aが不良在庫化して大量にあったので、これを使いましたが、今から製作されるのであれば、1N4148を購入することをお勧めします。 (一般的な小信号用シリコンダイオードなら大概のものが使用できると思いますが、1S2076A, 1N4148の2種類のみでしか動作は確認していません。)
ちなみに、上の写真のように、1S2076Aには部品名称を示す表示が何もありません。(1N4148には部品状に記載がある)一度他の種類のものとまじったらわからなくなる可能性がありますので、ご注意を。
トランジスタ
言わずと知れた2SC1815。 今回はこのとても有名なトランジスタのGR(グリーン)ランクを2つ使用します。 極性があり、逆方向に接続すると動作しないのでご注意ください。
今回は、トランジスタの増幅作用を用いて、発振回路を構築します。
2回路入りコンパレータ
秋月電子で最も安価に販売しているコンパレータを使用します。このコンパレータは、入力された電圧と基準値を比較して、基準値よりも値が大きければ電源電圧が、低ければ0Vが出力されます。 今回はこのコンパレータに2つの仕事をさせていて、一つは電圧の比較、もう一つは、人間の耳に聞こえる音を生成するというものです。
(詳しくは解説編で…)
具体的には、下の図のように、黒丸ポッチに一番近い端子が1番ピンになります。
逆に挿したりすると、動かないのみならずコンパレータが壊れて使い物にならなくなるのでご注意ください。(下図右のように、黒丸ポッチではなく切欠があるICもあります。)
ポリウレタン銅線など
コイルの材料になる導線です。 ポリウレタン銅線は一般にUEWと呼ばれるもので、絶縁体にポリウレタンを用いたものになります。 0.26mmは自分がよく使う太さなのでリール巻を買ってたりします。
部品屋などで今回の為だけに購入するなら、下のような形態で売っているものを利用すると良いでしょう。
今回は絶縁体の材質はそこまで動作に影響を及ぼすものではないので、ポリウレタン銅線でも、ポリエステル銅線でも、ホルマル線でも構いません。
ホームセンターで「エナメル線」と書かれて売られているもの(その実態はUEW)も大抵使用できます。 ただし、色が似ているからといって銅線(裸線)を使用してはいけません。あくまで、銅の周りに絶縁塗料が塗られているものを使用しなければ、コイルになりませんので(^^;)
また、線の太さは、0.26mm~0.4mmの間なら動作することを確認しています。
太さ30mm前後の丸棒
コイルを巻くのに使用します。30mm前後の丸棒であれば本当に何でもよいので、各家庭の「台所の主」を説得して麺棒などを借りると良いでしょう。(もちろん麺棒の太さが太すぎると使えませんが。) ちなみにこの丸棒はコイルを巻くときのみに使用し、作品に組み込むわけではないので、見た目がきれいである必要はまったくありません。(笑) 私は家に転がってた太さ30mmの丸棒の切れっぱしを使用しました。
検知コイルを巻く
コイルの手作りなんてやってると、[放送禁止ピー音] 年前の小学生時代を思い出します。かつては父の仕事を妨害しては(笑)モーターやラジオのコイル巻きを手伝ってもらったものです。
あのころはまだ今ほどインターネットがホイホイ使える時代じゃなかったので、「ググる」という習慣がなかったわけですね。自分もずいぶんおっさんになってしまったもんだ。
さて、まずは用意した30mm丸棒の周りに不要になったチラシなどを巻いて、太さが35mmになるようにします。(下図)
準備が出来ましたら、いよいよコイルの巻き始めです。 用意した径0.26mmのポリウレタン銅線を40回、先ほどの丸棒+チラシの上に巻きます。(ちなみに、直径35mmの丸棒に導線を40回巻くと、大体5mになるので、あらかじめ5m分、線を切りだしておくと作業がしやすいです。)
また、巻くときは綺麗に巻かず、下のように5~10mm程度の幅になるように導線を集めて巻いておくと良いです。
コイルが巻けたら丸棒から取り外します。(この際、ほどけないようにセロハンテープなどで仮止めしておくとよいです。)
そして同じコイルをもう一つ作っておきます。
二つのコイルが出来上がったら、それら二つのコイルを重ね合わせ、特定の2本の線をより合わせます。各コイルからは下の図のA~Dのように二つずつの線が伸びているはずです。その際に、上側にあるコイルのCの線と下側にあるコイルのBの線をより合わせます。(異なった線をより合わせてしまうと、動作しません。) 尚、下の図ではコイルの巻数を大幅に簡略化して3回としていますが、実際は40回巻です。 もう一度書きますが、上側のコイルの向かって右から来た線と、下側のコイルの向かって左から来た線をより合わせます。
要するに、二つのコイルを重ね合わせたとき、A→BC→Dが同じ向きに巻き続けるようにすればよいわけですね。
以上、お疲れ様です。今日はここまでです。
明日からは本格的にはんだ付けを行っていきます。
回路図だけでなく実体配線図を用いて説明するので、半田付けしながら配線を考える必要はありませんので、初心者の方も諦めずに作ってみましょう。
それではまた明日。
→ 金属探知機の製作2 へ続く